三脚檣写真帖 (2)
Photo Album 02 (Tampion 2)




 ようこそ三脚檣写真帖へ

 ここでは昔の軍艦の写真を中心に、普通の書籍やホームページでは取り上げないような、一風変わったものを集めてお目に掛けます。

 ここは、(1)に続いて砲口栓シリーズですが、近代艦と現用艦、そして(1)のアップ以後に見つけた写真を追加してみました。



114mm_twin_gun

 イギリス、1960年代のカウンティ級駆逐艦に積まれていた4.5インチ連装砲塔

 辛うじて砲口栓に飾りがあると判るのですが、翼を広げた鳥らしいとしか言えません。コウモリにも見えなくはないです。艦名も判らないので判定不能。右下に砲口部を拡大してみましたが、印刷物を無理に拡大すると、こういう風にしか見えないんだよね。

 調べなおしたら、この写真はオーストラリアの駆逐艦『ヴァンパイア』のものでしたので、デザインはコウモリそのもので間違いないでしょう。原文にある「イギリスの」は、「イギリス製の」の意味のようです。


Frigate Jupiter

 イギリス、リアンダー級フリゲイト『ジュピター』(Jupiter 1967) のなにか

 説明には三連装砲身の砲口栓とあり、クロームメッキで幅68センチ、高さ22センチ、奥行き10.5センチ、重量8キログラムという立派な数字があるんですが、これの正体ってなんだろ。
 『ジュピター』が持っていた「三連装」は、対潜迫撃砲のリンボーくらいですが、あれはもっとはるかにデカイもののはずだし、たしか3門が微妙に角度を変えていたから、1個で済ませられるとは思えません。やはり、まったく別なものなのかも。

hush 薀蓄
 ジュピターは雷神ゼウスのローマ名ですから、当然すぎる選択。




Battleship Hercules

 イギリス戦艦『ハーキュリーズ』(Hercules 1910) の12インチ主砲塔

 1915年の撮影。砲口栓に描かれているのはヘラクレスそのもののようですが、これは本艦の正式なバッジにはない図案だということです。前に立っているちょっと体型の情けないおじさんは、このときの戦隊司令官、フォークランドで英名を馳せた、かのスターディ提督であります。


Battle-cruiser Queen Mary

 イギリス巡洋戦艦『クィーン・メリー』(Queen Mary 1912) の後部13.5インチ主砲塔

 砲口栓には実に優雅な文様が描かれています。


Queen Mary's tampion

 で、砲口栓のアップ

 文字は「M」と「R」、上に王冠ですね。王冠は、他で見られる船が並んだものとは異なるようです。「M」は Mary でしょうが、「R」は何ですかね。

hush 薀蓄
 MRは、(クィーン・メリーのラテン語表記による) Maria Reginaの略です。
 エリザベス女王の場合はERと表記されます。




Battleship Mikasa

 日本戦艦『三笠』(1900) の後部12インチ主砲塔

 レプリカとはいえ、ただの真鍮のはめ込み栓ですね、面白くもなんともない。把手は縦位置になっています。横須賀で撮影。
 どうせ飾りなら、もう少し色気のあるものとも思いますが、菊の御紋章は使えないでしょうし、三笠山じゃお菓子みたいだし、何かいいデザインありませんかね。とはいえ、現実にそういうものが使われていなかったのであれば、やりすぎになってしまうかもしれません。


ironclad Neptune

 フランス装甲艦『ネプチュヌ』(Neptune 1887) の後部34センチ主砲

 フランス艦では珍しい、オリジナルらしい図案入りの砲口栓。両側にリングが二つ付いています。元の写真を拡大しても、不鮮明で絵柄の推定はできませんでした。砲の下に見える紋章も気になるところです。


Battleship Bouvet

 フランス戦艦『ブーヴェ』(Bouvet 1896)の前部305ミリ主砲

 これもどうやら図案入りらしく、19世紀末のフランスにはそれなりのものがあったようです。その割に写真が極端に少ないのはなぜなのかな。図案は星か鳥のようにも見えますが、写真が荒くて判然としません。比較的大きなリングが付いています。


deck gun of esmeralda

 チリの練習帆船『エスメラルダ』(Esmeralda 1952)の舷側に装備されている小口径砲

 6ポンド砲くらいですが、どういう名称かは不明。手前に並んだ剣の握りのようなのは索具止のビレイ・ピン。アルミ製だったかな。


Trainingship Esmeralda

 で、それの砲口栓です。素材は確認していません。

 上部にあるクレスト(王冠)の図案は、イギリスの『トラファルガー』と同じもののようです。中央に帆装戦列艦の艦尾を真後ろから見た図柄、その脇に帆を前から見た図柄、両脇のは中央と同じですが、縦割り半分ずつになっています。
 錨マークの下には「ARMADA DE CHILE」と浮き彫りされています。この2枚は、1997年に同艦が晴海を訪れたときに撮影しました。


Panteleyev 100mm

 ロシア大型対潜艦『アドミラル・パンテレーエフ』(Адмирал Пантелёев 1991)の100ミリ砲

 1999年に横須賀で撮影。


Pantereyev

 その砲口蓋のドアップ

 白っぽくなっているのは、露出ミスで暗かったのを補整したためです。双頭の鷲が脚に握っているのは何でしょうか。中央の騎士はほとんど漫画ですね。
 ご覧のように、これは図案を描いた布を、砲口の形に合わせて縫い作ったものですから、真鍮製の栓のようなしっかりした備品ではありません。蓋というよりカバーでしょうか。図案は本艦のバッジそのものなのですが、ちょっと変なところもあります。それは次のシリーズでお目にかけましょう。

hush 薀蓄
 これはロシアの国章で、東ローマ帝国から継承した双頭の鷲と聖ジョージですね。
 脚で持っているのは主権を表す笏と宝珠です。鷲が抱いているのは聖ジョージを描いた紋章。




FFG McLusky

 アメリカのミサイル・フリゲイト『マクラスキー』の3インチ砲

 『O.H.ペリー』級の一艦です。1991年に横須賀で撮影したもの。ご覧のようになんにも付いていませんでした。アメリカではミサイルなどの発射筒口に、艦番号を入れたり、バッジや旗をペイントしている場合が多いですね。


BB Missouri

 アメリカ戦艦『ミズーリ』の16インチ砲

 おしまいに色気のないのを。1983年にブレマートンで撮影されたモスボール中の写真です。
 そりゃあまあ、記念品になるようなものを付けておいて取られる心配するくらいなら、こんなんでも仕方がないんでしょうけど。今はどうなっているのかな。記念艦としての写真を見る限りでは、たいしたものは付いてないみたいですね。映画でも、木栓に真鍮らしい星印がついているだけでした。


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