三脚檣写真帖 (9)
Photo Album 09 (Funny photos)



 ようこそ三脚檣写真帖へ

 ここでは昔の軍艦の写真を中心に、普通の書籍やホームページでは取り上げないような、一風変わったものを集めてお目に掛けます。

 このページでは、前のページに続いて、ちょっと風変わりな船だとも選んでありますが、船そのものではない「何だこれ?」というようなものも集めてあります。ここではまず、8ページで出題した謎の円筒形物体の正体解明から。



Mystery photo 2

 さて、これがいったい何なのか、一連の写真で、これの正体を明かしましょう。


Mystery photo 3

 ではまず、原因の発生から

 1916年10月20日、場所は黒海沿岸のセヴァストポリ、ロシアのド級戦艦『インペラトリツァ・マリア』は、乗組員のサボタージュが原因とされる弾薬庫爆発によって、転覆、沈没しました。


Mystery photo 4

 ドックへ曳き入れられる『マリア』

 綺麗に裏返った船体は、1919年に浮揚され、裏返しのままドックへ入れられて解体されました。
 これはまあ、直接あの謎の円筒には関係しないわけで、その原因と言うだけです。


Mystery photo 5

 浮揚作業

 いよいよ謎の円筒の御活躍なのですが、これはそのクライマックスの写真。
 盛大に泡を噴出しながら海面に姿を現したのは、『マリア』の主砲塔です。見えているのは揚弾筒の下部で、逆さになった船体から抜け落ち、海底の泥に埋もれていたものです。


Mystery photo 6

 見事、浮揚に成功

 圧力のかかる浮力タンクを避けて、放射状に伸びたたくさんのワイヤが見えるでしょうか。『マリア』の砲塔は、こうして15年ぶりに太陽の光を浴びたのです。1931年8月25日 (露暦かも) のことでした。


Mystery photo 7

 仕掛けの解説図

 こういう形で、逆さになった砲塔が吊り上げられたわけです。


Mystery photo 2

 怖い写真

 これは『マリア』の解体中の写真なんですが、クレーンの運用があんまり怖いので載せてみました。こんな振り回すようなことをして、だいじょうぶなものなんでしょうか。
 吊り上げられているのは、沈没していた船体の中へ入るための圧力室で、真ん中の部屋が艦内への入口、両側の円筒が圧力室のようです。船体内部を一部圧力排水して作業していたため、このようなチェンバーが取り付けられていました。ドックへ船体を曳き込んでいる写真にも写っています。
 転覆した『マリア』の艦底は海面上にありましたから、このような方法が可能だったのでしょう。なお、爆発したのは艦首側の弾薬庫で、砲塔のいくつが形を保っていて、上記のような方法で引き上げられたのかははっきりしません。原著はロシア語ですので、十分な読解はできず、私が何か間違えている可能性はあります。

 さて、ここからは別のお宝写真をお見せします。



Old DD Engels' 12inch recoiless gun

 ロシア、ではない、ソヴィエトの駆逐艦『エンゲルス』の12インチ無反動砲

 砲身は、戦艦用のものを改造したらしいです。補強外筒を外して、内側の砲身(内筒とは違います。詳しくはどこかで砲身の構造を見てください)を使い、無反動にするための噴射口を付けたのでしょう。長さも詰めているかも。
 どう見ても後方にあるのは艦橋なので、艦首甲板に据えられているのでしょう。後方ブラストの大きい無反動砲ですから、砲尾が確実に艦外へ出ている状況でなければ、発砲できないと思われます。艦首正面へ射撃したら、艦橋がなくなっちゃうだろうなあ。
 おそらく、モニター系列を除くと、駆逐艦級の軍艦が装備した最大口径砲のナンバー2でしょう。一番はもちろん、前のページで紹介した『ヴェスヴィオス』です。排水量はこれより小さいですし、あっちは15インチ3門ですから。


12inch stern gun

 同艦の艦尾砲

 ハープーンみたいな装備法ですね。なんとなく背中に担いだ忍者刀を連想してしまいました。多分、装填は砲を後方へ向けて寝かせ、甲板上から行われたのでしょう。
 この艦のデータを見つけるのは苦労でして、写真のキャプションにはほとんど何も書いてなく、該当しそうな艦を拾おうにも、Conway の索引に艦名はないときています。本文を漁っていくと、どうやらこれは、1915年に進水した『ルテナント・イリン』級駆逐艦『デスナ』Desna が、1923年に改名したもののようです。
 残念ながら、Conway には12インチ砲装備の記述はなく、詳細は判りません。ちなみに完成時の要目は、常備排水量1260トン、長さ98メートル、幅9.3メートル、4インチ砲4門、18インチ魚雷発射管9門、30000馬力で32ノットというところです。原因は判りませんが、1941年8月24日に喪失となっています。

 その後、ロシアの友人フセスラフ Vseslav さんから情報をいただき、下記のような要目が判明しております。
「この無反動砲は、システムK (L.V.Kurchevskiy の開発になる) と呼ばれる既存のもので、特に先進的な装備ではない。駆逐艦『エンゲルス』への装備テストは、1934年9月21日から23日に行われた。

砲としての性能は、 ノズルを含む砲身全長:12035mm、 システム全重量:17.5トン、 砲弾重量:330kg、 初速:540m/s、 最大射程:13725m である。

計画では、1隻の駆逐艦に5門(艦尾に3門、通常の装備位置に2門)の同砲を積む予定だった。欠点の少ない兵器ではなく、精度が悪くて陸上目標しか攻撃できなかったし、装甲貫徹能力は期待できない。射界の制限も大きい」

『エンゲルス』自体は1941年8月24日に、フィンランド湾で触雷、沈没したようです。


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